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向田邦子『思い出トランプ』の空気
JUGEMテーマ:自分が読んだ本

ちょっとお久しぶりです。今日は一気に3冊くらい書いちゃいます!なぜなら眠れないからです!!!
まず1冊目は向田邦子さんの名著『思い出トランプ』。
人妻とか、愛人をもつ社長とか、サラリーマンとか。いろんな人間模様をトランプみたいに描いた短編集です。 私が、一番最初に読んだ向田作品でもあります。母は「向田邦子はちょっと暗くて苦手だ」と言っていましたが、私には暗いというよりも、静まり返っている という感じがしました。
短編のなかで、一番好きなのが「はめ殺し窓」というお話。年をとってもなお性的で精気みなぎる母をもつサラリーマンは、母と似ないタイプの妻を選ぶも、女のなかにある「女であろうとする気持ち」に気づき、ため息をついた・・・みたいな、なんてことない話なんだけど、このサラリーマンのお母さんの描写がなんていうか生々しくて、私は好き。汗っかきで、水をよく飲み、全体的に恰幅があって、年をとっても、若かりし頃に一度駆け落ちしかけた男の面影を追っている・・・・そんな、おばあさん。なんか、会ったことがあるような気になりませんか? それに、おばあさんになっても駆け落ちしかけた相手を追っていつまでも女でいる現役感。なんか、憎めなくて好きなんです。それに対して、そういう母を見て育った主人公は、奥さんになるひとを選ぶときに「母とは似ていないタイプの女性を」と思って、ごぼうのようにがりがりした、女っぽくない地味な人を選んだのに、結局、女は女。においたつ色気は、だんなの前でこそ出さないけれど、なぜか若い医師の回診では色めきたってしまう。それに気づいてしまう主人公・・・
なんていうか、女って、すごい。そして、男って、ちょっと惨め。プライドが邪魔をして、生きたいように生きれないもどかしさすら感じましたよ。ほかの短編も、にくめない人間がいっぱいでてきます。どれも、なんてことない日常のひとまくなのに、なんかドラマティック。でも、とても静かにドラマティックなんです。なんていうのかな、夏休みの昼下がりに、お母さんが買い物に出ちゃってて、だれもいない家で留守番してるときの空気というか、床の冷たさとか、そういうのに似ている。なんてことないのに、特別に感じられてしまうのが、向田作品の魅力なのかな?と思います。

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